ファブラボは途上国と相性がいい
8/26にfab9 第9回 世界ファブラボ会議 国際シンポジウムという、世界各国のファブラボ代表者が各々の国のファブラボにおける取り組みについて紹介するシンポジウムに行ってきました。
ファブラボとは、3Dプリンターやレーザーカッターをはじめとした様々な工作機械を一般市民が利用できる施設であり、また子供から大人まで誰でも自由にモノづくりができるインフラを実現させようという世界的な運動でもあります。
ファブラボは2002年にMIT(マサチューセッツ工科大学)から世界中に広がり、現在その数は年々増え続けています。
このシンポジウムで各国のファブラボの活動やその利用についての話を聞かせて頂きましたが、ぼくが強く感じたのは、「ファブラボは先進国よりも発展途上国にこそ必要であり、途上国と非常に相性がいい」ということです。
その理由は次の二つです。
◆途上国の人が自ら価値を生み出す仕組みを構築できる。
このシンポジウムでケニア人のカマウ・ガチギさんがファブラボ ナイロビにおける活動や国が抱える問題について語っていました。
ケニアを含む途上国は先進国から多額の金銭的支援を受けていますが、よく言われているようにその多くを国の上層部がピンハネしているという状況であり、最も支援が必要であろう末端市民に渡る支援金や物資はかなり少なくなってしまっています。
また、途上国の子供達の教育を目的として政府開発援助やNGOの活動などによって教育機関は増えているものの、親が家庭の労働力として子供に依存しているために出席率も低く、子供達は十分な教育を受けられていません。
そのため、自分たちで新たな価値を生み出し自分たちの力で貧困を脱するための「仕組み」を構築できず、天然資源や先進国による支援に頼りっぱなしになっているのです。
これでは支援金を増やしたところでほとんど意味がありません。
ファブラボの目的は、誰もが自らの手で新しいものを創れるようになることですから、途上国でファブラボを増やすことは、途上国の子供達にとって非常に効果的な教育になり、先進国からの支援に頼ることなく自分たちの力で新しい価値を生み出す「仕組み」を構築していくことに繋がるのではないでしょうか。
◆途上国から世界中へ、リバースイノベーションの流れを促進させることができる。
世界の産業に革命をもたらすイノベーションは、先進国で生まれるものだと思われがちですが、途上国での需要から生まれたイノベーションが先進国に逆流する「リバースイノベーション」の流れが近年増加しています。そして、企業が真のグローバル企業として発展していくためには、いかに途上国でのニーズを満たすかが重要になってきています。
ファブラボを途上国で増やすことによって、途上国特有の問題を解決したり国民の新たな需要を満たすために必要なハードやソフトを、その国主体でその国で利用できる資源を有効活用しながら創ることが可能になります。
実際に、ガチギさんはファブラボ ナイロビで水汲み機や発電機などの現地の生活を便利にするものをたくさん発明しているそうです。
こうした過程で生まれたイノベーションを他の途上国や先進国に輸出したり、他国の企業と共同開発を進め続けることで、途上国から世界中を豊かにしていくことができるのではないかと思います。
つまり、ファブラボを途上国で増やすことは、途上国だけではなく先進国にとっても有益なことなのです。
一方、先進国のひとつである日本ではどうでしょうか。
日本の労働人口に占める製造業従事者の割合は年々下がっており、サービス業の割合が上がってきています。とはいえ、まだまだ日本は製造業で成り立っている国であり、また日本の製造業のうち中小企業の割合は98%を上回っています(労働者の割合は75%程度)。
このような現状を踏まえると、日本でファブラボのような施設を増やしてパーソナルファブリケーションを推進していくことは、下手にやってしまうとこうした製造業従事者の仕事を奪うことになりかねません。そのため、日本政府としてはどうしても慎重にならざるを得ないのです。
このシンポジウムでファブラボジャパンの仕掛人である田中浩也さんは、「(人々は)製造業とサービス業の間にとか先進国と途上国の間にとか作る人とそれを利用する人との間にとかいろんな物事の間に線を引いて考えがちだけど、ファブラボはそういった線引きをできるだけなくしていきたいんです。」
というようなことをおっしゃっていました。
あぁ未来っぽくてすごくいいなぁと思いましたが、こういったことも含めてファブラボの活動がいかに社会にとって有益かということを訴え続けないことには日本でそのネットワークを広げていくのは難しそうだと感じました。
やっぱり、ファブラボはモノづくりに関する既得権のしがらみが複雑な先進国よりも途上国とのほうが相性がいいんじゃないかなぁとぼくは思ってしまうのでした。
ファブラボとは、3Dプリンターやレーザーカッターをはじめとした様々な工作機械を一般市民が利用できる施設であり、また子供から大人まで誰でも自由にモノづくりができるインフラを実現させようという世界的な運動でもあります。
ファブラボは2002年にMIT(マサチューセッツ工科大学)から世界中に広がり、現在その数は年々増え続けています。
このシンポジウムで各国のファブラボの活動やその利用についての話を聞かせて頂きましたが、ぼくが強く感じたのは、「ファブラボは先進国よりも発展途上国にこそ必要であり、途上国と非常に相性がいい」ということです。
その理由は次の二つです。
◆途上国の人が自ら価値を生み出す仕組みを構築できる。
このシンポジウムでケニア人のカマウ・ガチギさんがファブラボ ナイロビにおける活動や国が抱える問題について語っていました。
ケニアを含む途上国は先進国から多額の金銭的支援を受けていますが、よく言われているようにその多くを国の上層部がピンハネしているという状況であり、最も支援が必要であろう末端市民に渡る支援金や物資はかなり少なくなってしまっています。
また、途上国の子供達の教育を目的として政府開発援助やNGOの活動などによって教育機関は増えているものの、親が家庭の労働力として子供に依存しているために出席率も低く、子供達は十分な教育を受けられていません。
そのため、自分たちで新たな価値を生み出し自分たちの力で貧困を脱するための「仕組み」を構築できず、天然資源や先進国による支援に頼りっぱなしになっているのです。
これでは支援金を増やしたところでほとんど意味がありません。
ファブラボの目的は、誰もが自らの手で新しいものを創れるようになることですから、途上国でファブラボを増やすことは、途上国の子供達にとって非常に効果的な教育になり、先進国からの支援に頼ることなく自分たちの力で新しい価値を生み出す「仕組み」を構築していくことに繋がるのではないでしょうか。
◆途上国から世界中へ、リバースイノベーションの流れを促進させることができる。
世界の産業に革命をもたらすイノベーションは、先進国で生まれるものだと思われがちですが、途上国での需要から生まれたイノベーションが先進国に逆流する「リバースイノベーション」の流れが近年増加しています。そして、企業が真のグローバル企業として発展していくためには、いかに途上国でのニーズを満たすかが重要になってきています。
ファブラボを途上国で増やすことによって、途上国特有の問題を解決したり国民の新たな需要を満たすために必要なハードやソフトを、その国主体でその国で利用できる資源を有効活用しながら創ることが可能になります。
実際に、ガチギさんはファブラボ ナイロビで水汲み機や発電機などの現地の生活を便利にするものをたくさん発明しているそうです。
こうした過程で生まれたイノベーションを他の途上国や先進国に輸出したり、他国の企業と共同開発を進め続けることで、途上国から世界中を豊かにしていくことができるのではないかと思います。
つまり、ファブラボを途上国で増やすことは、途上国だけではなく先進国にとっても有益なことなのです。
一方、先進国のひとつである日本ではどうでしょうか。
日本の労働人口に占める製造業従事者の割合は年々下がっており、サービス業の割合が上がってきています。とはいえ、まだまだ日本は製造業で成り立っている国であり、また日本の製造業のうち中小企業の割合は98%を上回っています(労働者の割合は75%程度)。
このような現状を踏まえると、日本でファブラボのような施設を増やしてパーソナルファブリケーションを推進していくことは、下手にやってしまうとこうした製造業従事者の仕事を奪うことになりかねません。そのため、日本政府としてはどうしても慎重にならざるを得ないのです。
このシンポジウムでファブラボジャパンの仕掛人である田中浩也さんは、「(人々は)製造業とサービス業の間にとか先進国と途上国の間にとか作る人とそれを利用する人との間にとかいろんな物事の間に線を引いて考えがちだけど、ファブラボはそういった線引きをできるだけなくしていきたいんです。」
というようなことをおっしゃっていました。
あぁ未来っぽくてすごくいいなぁと思いましたが、こういったことも含めてファブラボの活動がいかに社会にとって有益かということを訴え続けないことには日本でそのネットワークを広げていくのは難しそうだと感じました。
やっぱり、ファブラボはモノづくりに関する既得権のしがらみが複雑な先進国よりも途上国とのほうが相性がいいんじゃないかなぁとぼくは思ってしまうのでした。
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